私の名前はミュウミュウ、メスで10才です。小さい頃、親に棄てられ阿東の山奥を転々として暮らしていました。ある日、ふらふらと歩いていると猫仲間で恐れられムカデ御殿と名高いボロ家に着きました。友達はネズミは多いいが、ムカデが天井から降ってくるので危ない、と言って近づきません。しかし好奇心旺盛な私は、家の周りをぐるっとして見たくなりました。ボロ家の周りをニャアニャアと警戒しながら歩いていると優しそうなご主人が私に気づき食べ物を恵んで下さいました。この家には、可愛い奥様と丸々太った2人の子供、そして威張った犬が一匹いることが分かりました。奥様と子供は私には無関心でしたが、ご主人様のなんとお優しいこと。私はその優しいご主人様にお仕えしたく、あの手この手で挑みやっとの思いで、外で飼って貰える事になったのです。しかしこれが、数奇な運命の始まりでした。阿東の冬は長く厳しいのにこたつで丸くなる事もできず、家出も考えましたがご主人様との別れが辛くただひたすら辛抱したのです。長い冬が終わり雪解けと共に私にも春がやって来ました。しかし田舎の山奥。こんな美人の私ですから、言い寄って来るオスネコは多かったのですが、皆ブサイク。この家の奥様とお嬢様はメンクイなので、私はいつも見る目が無いと注意を受けていました。しかし、余りに通いつめて来るオスネコに根負けし、家族の反対をよそに結婚、出産となりました。夫が余りにブサイクなのでお嬢様は貰い手が無いかもと、とても心配され父親に似てくる前に嫁に出そうと、懸命に里親探しをして下さいました。そのかい合って子供達は可愛い内に貰われて行きましたが、あれから1度も子供達には会っていないのでどんな顔に成ったかは知るよしもありましん。その後は、同居の犬の兄貴の機嫌を損ねない様に、散歩の時も3歩下がって影を踏まず、奥様はそんな私を親しみをこめて「ウチのノラ」と、呼んでくれるようになりました。
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